空を飛ぶ

2014年09月07日 20:59

『世界わが心の旅 宮崎駿「サン=テグジュペリ 大空への夢」』を見る。

紅の豚から飛行艇へと興味が移れば、当然見たくなるフィルムである。DVD化されているようだが、レンタルビデオショップでは取り扱っておらず、DVD販売店に行っても、取り扱いがないだけではなく、メーカーでも在庫がないとのこと。まぁしょうがないかと思っていたが、有料か無料かわからないネット動画で見ることができた。

サン=テグジュペリが飛行した経路を、小型の飛行機でたどるというもの。放送は98年なので「もののけ姫」を描きあげた頃、この旅行をしたことになる。宮崎駿はサン=テグジュペリの「人間の土地」に相当な影響を受けているらしく、純粋な興味だけでなく、作家としての自分自身を確かめるような、そんな旅だったのではないかと思われる。

飛行艇そのものに少し興味が出てから、紅の豚を観る目も変わった。モノとしての飛行艇の存在を感じてしまう。それもあって、純粋に飛行機を観るだけでも、このフィルムは面白かった。ただ、少し驚いたのは、宮崎駿自身が、彼が長年夢想したような、あるいはそれ以上の風景に出会い、涙を流すシーンだった。『風立ちぬ』が完成し、試写会で涙を流したことは知っていたが、特にサハラ砂漠へ行き、感極まったシーンは感動的なものがあった。

宮崎駿という人物は、日本人のなかでもかなり有名な人であり、その作品もまた然りであるため、彼の作品や彼自身に興味を抱きながらも、ちょっと距離を置きたいようなそんな人物であった。しかし、このフィルムを見ながら、彼がサン=テグジュペリが経験したことをそのまま経験したいという、いわばミーハーな感覚は、ある意味、私を安堵させた。憧れをもっている人について、批評性も何もなく、純粋に憧れていいのだと、当たり前のことを言っているように思えた。

『人間の土地』は、わかったようなわからないような内容だった。宮崎駿の言葉を事前にずいぶん聞いているため、初めての物語には思えなかったのかもしれない。でも、宮崎駿がこの本に照らして言った「彼らの僕が一番好きなところは、ここにとどまってはいけないっていう気持ちが、こう、それを掻き立てられるね、もんなんですよ」という言葉は、とても重く感じた。

私にとって飛行艇を安心して好きでいられるのは、飛行艇に乗ることがないからである。性格上、それに惚れるならば、完全に興味を注ぎたくなる性分なのであるが、飛行艇に乗ることはないため、何分の一かに縮小された模型で満足できる。でも、上手くは言えないが、その躍動感そのものは、私の平凡な生活への僅かなエンジンになってくれている。パソコンの前に座り、電話で現場の文句を聞きながらも、自分が主導的に、一つの機体となって飛んでいるのだと、そう思わせてくれる。

私にとって「空を飛ぶ」とは、そういうことなのかもしれない。

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